◼︎開催日時
・2026年3月21日(土)18時15分~21時35分
◼︎会場
・東京・渋谷「東京カルチャーカルチャー」
◼︎出演(敬称略)
【ゲストスピーカー】辻発彦(プロ野球解説者。埼玉西武ライオンズ元監督)
【MC】斉藤一美(文化放送ライオンズナイター実況アナウンサー)

東京カルチャーカルチャーで2012年以来14年ぶりの開催となった「開幕直前!2026プロ野球ペナントレース大予想大会」は、今年もただの順位予想イベントでは終わらなかった。
開幕目前の12球団を一気に見渡す恒例企画の前に、冒頭はベスト8敗退となったWBCの総括から。東京ラウンドでは強さを見せた侍ジャパンが、準々決勝ではアメリカの舞台で苦しみ、大きな落差を味わった。東京とアメリカでは、移動距離も時差も空気も違う。東京ではしのげた僅差の試合も、舞台が変われば同じようにはいかない。オーストラリア戦での吉田正尚の逆転弾、チェコ戦でのオンドジェイ・サトリアの粘り、そして日本で見せた好調さが、なぜ最後の舞台では持続しなかったのか。そこにはコンディションだけでなく、国際大会特有のプレッシャーと適応力の差があった。
さらに話題は、ピッチクロック、ピッチコム、世界統一球、データ活用といった制度面にも広がっていく。「世界で勝つなら導入や適応は避けて通れない。ただしNPBにはNPBの事情もある」。
これからの日本の野球を考える議論となった。
「勝てる野球」とは何か。辻発彦の視点
今回のイベントで改めて印象的だったのは、辻発彦の野球観だ。
派手さだけではなく、きっちりしていること。小技を使うこと自体が目的なのではなく、必要な場面で確実に仕事ができること。1点を取りにいく野球を否定するわけではないが、それだけでは勝ち切れない現実もある。点を取る設計も必要だし、投手運用も守備配置も、すべてがつながっていなければ勝てない。
今年のペナントレースは、単に「戦力があるかどうか」だけでは決まらない。故障者が出たときにどう埋めるか。捕手をどう使うか。中継ぎをどう再編するか。若手をいつ、どこで、どこまで使うか。つまり、編成そのものよりも運用の巧拙が問われるシーズンになる。そんな見立てが、会全体を通じて色濃く流れていた。

セ・リーグは今年も阪神が軸。各球団がどう向き合っていくのか
セ・リーグでまず高く評価されたのは、昨年リーグ優勝した阪神タイガースだった。近本光司、中野拓夢、森下翔太、佐藤輝明と、打線の軸がはっきりしている上に、投手陣まで含めて全体像が見えやすい。なかでも中野が目指す「3割・30盗塁・30犠打」という高いハードルは、このチームのきっちりした野球を象徴する話題だった。強みが明確な分、6番以降のつながりや下位打線から上位への循環が自然に回る前提で見られやすいところは、長いシーズンでは意外な綻びにもなり得る。
横浜DeNAベイスターズは、ケイ、ジャクソン、バウアーが抜けた投手陣の穴埋めが最大のテーマ。相川亮二新監督の下でどう再設計するかが問われる。打線では筒香嘉智のキャプテン就任、宮崎敏郎の安定感、そして辻が「一押し」と評した蝦名達夫の存在が印象に残った。一方で、投手再編だけでなく、桑原将志のFA移籍後に外野の並びをどのように固めるのか、打線の波をどう抑えるのかも大きなポイントになりそうだ。
読売ジャイアンツは、岡本和真のFA移籍が痛く、その代替として期待されたリチャードも左手骨折で離脱。開幕投手には64年ぶりとなるドラフト1位ルーキー・竹丸和幸が抜擢され、戸郷翔征の復調気配や、中山礼都の外野起用といった新しい材料もある。ただ、主軸不在の打線は成績以上に「怖さ」が薄れやすいだけに、若手が数字だけでなくチームの空気まで支えられるかどうかが、序盤戦のカギになりそうだ。
中日ドラゴンズは、バンテリンドームのホームランウイング新設が大きな話題。新外国人ミゲル・サノーの長打力や、ドラフト1位・中西聖輝への期待も大きい。井上一樹監督の明るさも、このチームの空気を変えつつあるように映る。それでも得点力不足という根本課題は残っており、サノーの一発頼みにならず、「どう点を取るか」を示せるかが、本当に勝ちを積めるかどうかの分かれ目になりそうだ。
広島東洋カープは、世代交代の空気が濃い。秋山翔吾がなお存在感を見せる一方で、平川廉や佐々木泰、勝田成といった若手の名前が次々に出てくるのは今の広島である。投手では床田寛樹の開幕投手、栗林良吏の先発転向も話題に。若手が前に出る年だからこそ、秋山のように試合を落ち着かせる存在の価値はむしろ増す。新しさと経験のバランスが順位を左右しそうだ。
東京ヤクルトスワローズは、やはり村上宗隆のFA移籍のインパクトが大きい。ドミンゴ・サンタナの離脱、ホセ・オスナの高い稼働率、内山壮真のポジション変更、高橋奎二の復帰など個別の話題は多いが、結局は「村上の穴をどう全体で埋めるか」に行き着く。池山隆寛新監督のもとで、どうつなぎ、どう補うのか。毎年のように故障者が続出することも無視できない。理想が崩れたあとにどこまで持ちこたえられるか。底力が問われそうだ。

パ・リーグは、ソフトバンク、日本ハム、西武に視線集中
パ・リーグは、優勝候補がそのまま強い、で終わらないのが今年の面白さだ。
連覇を狙う福岡ソフトバンクホークスは、近藤健介、周東佑京、山川穂高、栗原陵矢と並ぶ主力の顔ぶれがやはり強烈。その中でも栗原の捕手再挑戦は今季の象徴的なトピックだ。さらに中5日ローテ構想、今宮健太の柔軟な起用、笹川吉康ら若手の起用余地まで含めて、小久保裕紀監督は「さらにもう一段強いチーム」を作ろうとしている印象がある。ただ、選択肢が多い分、誰をどこで固定するのかは難しく、柔軟性が武器にも迷いにもなり得るとも。
北海道日本ハムファイターズは、かなり本気で強い。伊藤大海と有原航平の二枚看板に加え、フランミル・レイエスの勝負強さ、清宮幸太郎や万波中正の上積み余地、達孝太ら若手投手の成長まで含めると、優勝争いの軸として見るのが自然だろう。5年目を迎える新庄剛志監督の野球も、もはや奇策ではなく、エンドランや走塁判断まで含めた積み上げがチームの成熟として見えてきた。ただ、追われる立場になった時に、若い中軸が重圧の中でどこまで平常心を保てるかは、次のテーマでもある。
オリックス・バファローズは、宮城大弥、アンドレス・マチャド、曽谷龍平、山下舜平大と投手陣の名前は豪華で、寺西成騎のような若手も楽しみだ。野手では森友哉の復調や、頓宮裕真の故障離脱をどう埋めるかがポイントになる。十分に上位候補だが、今のオリックスは「誰がいるか」以上に「その戦力がシーズンを通してどこまで働けるか」が重要だ。復帰組を元通りと見ていいかどうかも含めて、慎重に見たいチームでもある。
東北楽天ゴールデンイーグルスは、停滞感を破れるかどうか。宗山塁の存在感はやはり強烈で、そこに前田健太のNPB復帰、早川隆久の回復、ドラフト1位・藤原壮太らがどう絡むかが注目点になる。ただ、楽天は四球の多さや試合運びの重さといった課題が見えすぎている分、そこばかりを直そうとして別の歪みを抱えやすい。宗山やマエケンの存在で輪郭は見えつつあるだけに、その先に「楽天らしい勝ち方」まで描けるかが、浮上の条件になりそうだ。
サブロー新監督が指揮を執る千葉ロッテマリーンズは、種市篤暉の存在感がやはり大きい。さらにネフタリ・ソトのキャプテン就任、サードへ回る寺地隆成の起用法、2年間本塁打の無い安田尚憲への厳しい期待など、今のロッテは人の配置そのものにチームの意思が表れているように見える。練習量や育成、現場裁量と球団管理のバランスという、少し構造的な話題が自然に出てくるのもこのチームらしい。ただ、厳しさや量はそれだけで成果を保証するものではなく、ベテランの背中と若手の自発性が噛み合ってこそ、本当の意味で怖いチームになっていく。
そして最後は、埼玉西武ライオンズ。来場者の空気もあってか、このパートはやはり熱を帯びた。タイラー・ネビンの離脱、外崎修汰の守備位置、WBCで光った打撃を見せた源田壮亮が果たして公式戦でも打てるのか、古賀悠斗と小島大河の捕手争い、さらに抑え不在と、悩みを挙げればきりがない。ただ、悲観一色では終わらないのが今年の西武の見どころでもある。篠原響や岩城颯空といった若手投手には楽しみな名前も並ぶ。外崎をどこで使うのが最適か、一塁守備はそんなに簡単ではない、捕手は守備で選ぶのか打力で選ぶのか。会話はどんどん具体的になり、会場の西武ファン比率の高さも手伝って、笑いも頷きも多かった。
順位を動かすのは主力だけではない。若手台頭の面白さ
今回のトークが面白かったのは、スター選手の話だけで終わらなかったこと。
平川廉、勝田成、佐々木泰、宗山塁、寺西成騎、毛利海大、篠原響、岩城颯空、小島大河、滝澤夏央・・・。こうした名前が次々に出てきて、しかも単なる「期待の若手」で終わらず、なぜ面白いのか、どこが使いたくなるのかまで掘り下げられた。優勝候補を形づくるのは主力かもしれないが、シーズンの順位を実際に動かすのは、こうした若手や周辺戦力だったりもする。開幕前にそういう名前を聞けるのも、このイベントならではの楽しさだ。

生で聴く野球の話の面白さ
イベント終盤には、自然と辻自身の話にも熱が集まった。現場復帰はどうなのか、侍ジャパン監督はどうなのか、監督業とは何か、代表監督とは何を背負う仕事なのか。試合の采配だけではなく、その前後にある準備、責任、重圧まで含めて、現場を知る人ならではの言葉がにじんだ。
イベントの締めくくりは、辻のサイン色紙が当たるじゃんけん大会。予定より35分ほどオーバーしながらも熱気は冷めやらず、やっぱり開幕が待ちきれない夜となった。

